書き方を論じる前に「シナリオ」と「小説」、
その違いについて、ここで簡単に触れてみたいと思います。
●違い その1 「読者が違う」
・小説 → 読者(エンドユーザー)
・ゲームのシナリオ →ゲームディレクターやプログラマー、およびユーザー。
・ドラマ、映画、舞台のシナリオ → 監督や役者など、物語を構成するスタッフ。
上記のように伝える相手が違う。
だから、書かなければいけないことや書き方が違ってくるのです。
●違い その2 「書き方の形式(構造)が違う」
・小説 → 「地の文」と「セリフ」
・ゲームのシナリオ → 「話者の表示」「セリフ」「トガキ(仕様によって有無が分かれます)」「その他の演出」
・ドラマ、映画、舞台のシナリオ → 柱 トガキ セリフ
「小説」
小説はご存じのとおり、地の文とセリフのみで描かれる形式で、しかもそのままエンドユーザーである読者が目にすることになります。
なので、読者にとって読みやすく、読者が面白いと感じ取れる文章で書いているかが、とても重要です。
それにシナリオの形式と違い、セリフには話者が誰であるのか明記されていません。前後の流れや、セリフそのものから「誰が話したセリフなのか」を、判断できるように書かないといけないので、そこにテクニックが必要です。(誰が口にしたのかわからない、もしくは曖昧なセリフがあるというのは、よく見かけるミスだと思います)
このテクニックについては、いずれどこかで解説してみたいと思います。
「ゲームシナリオ」
ゲームのシナリオも、書いたセリフやトガキの文章が、そのままエンドユーザーに届けられるという点では小説と同じです。
誰が話者か、ユーザーにわかるような仕様であることが多いことを考えると、そこは小説よりも多少は書きやすいかもしれません。
加えて、画面上でのキャラの出入りやフラッシュ、暗転などの演出を指定することも、シナリオ執筆の現場ではよくあります。
これらをふまえて『最終的なゲームプレイ時の画面と音声』をも意識してセリフなどを書けることが、ゲームシナリオ執筆では重要になります。
「ドラマ、映画、舞台のシナリオ」
ドラマなどのシナリオとなると、直接エンドユーザーに届けられず、セリフは「役者さんの芝居」によって、柱やトガキは「監督その他の関係スタッフさんたちの演出」によって、最終的に映像としてお客さまに届けられることになります。
なので、エンドユーザーを意識しながらも、監督さんや役者さんがイメージしやすいように書く工夫が求められます。
●違い3 「トガキ」と「地の文」は違う
たとえば小説では「もの悲しく雨が降っている」とか「誰々は憤っていた」というような「心情描写」が地の文で書かれることがあります。ただ、ドラマなどのシナリオでは、それをそのままトガキにすることはできません。
映像ドラマのトガキでは「映像にできる情報しか、基本的に書けない」という制約があるのです。
さらに細かい演出的な指定は、監督や演出家の領分でもあるので、そこに抵触するようなトガキはあまり求められません。
あくまで「セリフ」と「キャラクターの芝居」を書くことで、「物語上の人間を描くこと」がシナリオライターとしての仕事であると認識しておくとよいと思います。
……というように、いろいろと書いてきましたが、まずは難しく考えずに、
お手本とするような小説ならば小説、映像シナリオならば映像シナリオを手に入れて、
どうやって書かれているのか熟読して研究してみるのが、近道かもしれません。
まずは習うよりなれろ、で、ともかく書いてみるのが、じつは近道のように感じています。